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2012年6月

2012年6月 8日 (金)

『伊礼智の住宅設計、「標準化」から生まれる豊かな住まい』エクスナレッジ2012

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以前ある組織事務所のOBの方から、その方の勤めていた事務所は過去の設計図書の共有もなされず、事務所の技術的蓄積は個人に拠っている、という話を聞かされたことがある。「その事務所は人が大勢いるだけで組織の体をなしていないのだな」と、その時は思った。

 過去物件の情報共有がなされたとして、次のステップの一つが標準化である。ディテールは時代とともに変わっていく部分もあるが、CADが前提となっている今日では、本書で伊礼さんも述べているように、ある程度標準化していれば、「改善」していくこともできる。

さて、本書の前半はそうした「標準」にまつわる部分であり、基本的には空間要素からディテールに関する「標準」について解説されている。日本間の一間モジュールを基本とし、これが間崩れしないよう、階段やキッチン等の各空間要素の標準が掲載されている。一間モジュールは日本に住まう人の身体寸法が基本の一つになっているではなかろうか(もう一つは木材の寸法)。

本題とは少し離れるかもしれないが、吉村順三に傾倒する建築家諸氏がしばしば語ることに「天井が高いのは下品、天井は低い方がいい」等々がある。感覚的に語られることが多いが、吉村本人は住宅における親密さの演出とか、日本間の天井の低さ(もともと椅子を前提としていなかったゆえ天井は低くなる、またその結果、庇の深さ等と相俟って独特の反射光や透過光の間ができることなど)を、考えていたのではなかろうか。

後半はその標準的な木造住宅一軒分の実施設計図書がまるまる掲載されていて、とても参考になる。

ある建築家の仕事を一冊の書籍としてまとめるのは、その建築家にとっては励みになるだろうし、同業他者にとっては大変参考になる、と思う。

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