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2013年9月15日 (日)

Imperialism: A Study, J.A.Hobson, Originally published by George Allen and Unwin LTD in 1902, Cosimo,Inc.,NY, 2005

Hobson

J.A.ホブソンことジョン・アトキンソン・ホブソンによる古典である。日本語版はない。

ウラジミール・レーニンが『帝国主義論』の冒頭で「ここ数年、帝国主義論がにぎやかである」と述べ、その筆頭に挙げていた書である。序章、第一章・帝国主義の経済、第二章・帝国主義の政治の3部からなる。序章と第一章を読む。

19世紀末、資本の集中によって都市開発のあり方や建築設計および建築生産のあり方は変わっていったと言える。米国については、その時期は比較的明確に特定できると思われる。ただし、本書にその問題との関連を探ろうとするといささか肩透かしを食らうであろう。つまりレーニンの『帝国主義論』の前半は独占資本主義分析であり、それがレーニンの書の特質でもあった。ルイス・マンフォードによる分析もある程度それに近く、この線を追っていくと、いくつかの問題はもっと詳しくかつはっきりと論ずることができるはずである。言い換えるなら、本書にはそうした部分はない。

まず序章は国際関係論概論といった感じである。おおまかに言って19世紀のナショナリズムから20世紀の帝国主義へという展開において、ナショナリズム、植民地主義、帝国主義、国際主義の関係が整理される。ナショナリズムの基本である「ネーション」の定義は、J.S.ミルに負っている。「人類のある部分はその集団にはあるが他の集団にはないある共感の共有によって統合されているならば、ネーションを構成していると述べ得る」「その最も強力なものは政治的先行者の同一性であり、歴史とそれが帰結する記憶の共同体であり、過去の出来事に関する集団的な誇りと卑下、快と後悔の所有である」というものである。またフランスやドイツの「帝国主義」はイギリスが植民地主義と呼んでいるものに相当すること、国際主義は帝国主義から派生したもの、あるいはその一種であることなどが瞥見される。後者について、ヨーロッパではやはりローマ帝国の存在が大きかったことが示唆されている。いわばパクス・ロマーナにおける「世界共和国」=帝国(主義)=国際主義である。今日のヨーロッパ連合(EU)=準ブロック経済圏なども、この意味では帝国主義のあるあり方ということになるだろうか。

第一章は、文字通り帝国主義、というより著者が近代帝国主義と呼ぶものを大英帝国に即して経済の観点から分析したものである。この分析を読むと、当時の大英帝国あるいはイギリスは既に成熟の域あるいは衰退過程に入りつつあったという印象を持つ。本国の対植民地貿易が一定に達して動かないのに植民地の方は貿易が増え、これは本国以外それも本国の競合相手国との貿易が増えているからだとか、同じことは本国についても言えるとか、国は成長期に貿易が飛躍的に伸びる時期があるもののある一定の水準に達するとそれほど変動するわけではなく、むしろ内需が発達していくことや、また文字通り「植民地」、つまり本国の人口増加の捌け口という見方についても、実際の人口動態の数字を追いながら、必ずしも「植民」地であるわけではないことなどが検証されていく。

つまり結論から言うと、植民地あるいは帝国主義は儲からない、あるいはビジネスとして植民地あるいは帝国主義は儲からない、それどころか大きなリスクを負っていることが述べられていく。

それではなぜ、帝国主義というビジネスなのか。それは国内のセクショナリズム、階級、それに世界金融王の利益、つまり個別利益のために一般利益(国益)が使われるからである、とする。世界金融王にはロスチャイルド家とその取り巻きの名前が見える。少なくともこの時代、ロスチャイルドは相当の力を持っていたというべきか。ロスチャイルドの意向に反して発行された戦費調達債はない、という。

また彼らが利益を得る方法は、国家に負債を負わせること、新しくできた会社を株式市場に引き込むこと、相場の変動を煽る事である、という。日清戦争では戦費調達のため清帝国は初めて負債を負い、賠償金支払いのためにいいエサをヨーロッパに提供したことなどが述べられている。

リスク、それも最大のリスクは戦争ということなるだろうが、彼らにとっては最もぼろい商売ということになるのだろうか。

また税制について述べた個所では、個別利益を一般利益にすり替えるには間接税が使われる、とも述べられている。

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コメント

とても勉強になりました。ブックマークさせていただきました。

やっぱり戦争は、世界金融王のために起こされるんでしょうか。
日本は来年消費税増税されますが、それも戦争のためか、と思いました。

投稿: 加ッ田鳥屋 | 2013年9月25日 (水) 09時41分

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