2010年2月11日 (木)

フランク・ロイド・ライト『有機的建築』三輪直美訳 筑摩書房 2009

1939年のロンドンでの書名と同名の講演が前半を、1954年のThe Natural Houseと題された文がほぼ後半をなしています。

ライトの考えをある程度知っている読者であればひととおり確認といった感じで、そうでない読者にとってはひととおり分かる、といった感じの書でしょうか。

個人的には、ライトが岡倉覚三の影響を受けていたことの具体的部分が分かったことが一つの収穫です。もともとライトが衝撃的な経験をしたシカゴ万博日本館のプロデューサーも岡倉だったのですが、本書によれば、ライトは駐米日本大使から岡倉の『茶の本』を献呈されています。「そして、この言葉と出会ったのです。それにはまさしく私の考えていたことが、建築で表現しようとしていたことが書かれていました。「建築は壁と屋根によって在るのではなく、生きるための、その内部にこそ実在する」(19-20頁)、「日本の駐米大使から、岡倉覚三が書いた小冊子『茶の本』を受け取りました。それを読み、この文章と出くわしました。「部屋の実体は、屋根や壁で囲われた空間のなかに見出されるべきで、屋根や壁そのものにおいてではない」(224頁)この言葉はまた老子の言葉であるといいます。日本建築だけでなく、老荘思想にもライトは霊感を求めていたということでしょうか。さらにはまた「インド、ペルシャ、中国、日本の文明は、どれも同源の文化的インスピレーションにもとづいていますが、それはおもに釈迦牟尼仏への信仰に由来しているのでしょう。しかし、有機的建築のおおもとになった思想の原理は、それよりもむしろ中国の哲学者である老子の思想に共鳴します」(222頁)とあります。

最後に引用。「だからこそ私たちは今、「ラディカル」であるべきなのです。本物のラディカルです。うれしいことに、イギリスはこのような態度に好意的です」「本来ラディカルとは、ものごとの根本を見きわめる態度なのです。ラディカルの語源は、ラテン語で「根っこ」を表します」(122頁)

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